2008年5月24日土曜日

日経「ニッポン農政の不思議」……食育おばさん必読!



5月21日と22日の日経記事。知っている人には常識的な内容だが、国産農産物への思いこみの強い「食育おばさん」たちは知らない内容だと思う。メモ。

抜粋:
  1. コメの価格が上がっている。でも国際価格の上昇が理由ではない。政府が農家保護のための緊急対策として備蓄米を買い増すことを決め、価格上げを誘導した効果が店頭に表れ始めているためだ。
  2. 日本人が一年間に食べるコメの量は、2006年度で一人あたり61キログラム。1962年度の半分程度。コメがたりない世界とは逆に、日本では恒常的にコメが余る。それを避けるために水田の四割でコメを作らない減反政策で生産量を強引に減らし、価格を政府が支える。
  3. 価格が安い世界のコメ取引から日本のコメを切り離し、伝統的なコメ作りを保護するというのが日本の農業政策の絶対理念。コメを聖域と位置づけ、市場メカニズムから遠ざける。日本のコメの価格は意図的に導かれた結果だ。
  4. コメ余りの日本がコメ不足の世界から大量にコメを輸入している不思議。コメ市場を全面的に開放しない代わりとして日本政府が受け入れた「ミニマムアクセス」制度。国内年間消費量の一割に当たる77万トンを毎年輸入している。
  5. 国内外から買い上げて政府が貯め込んだコメは合計230万トン。輸入米は加工用や資料用に回しても余ってしまう。多額の予算が注がれている。
  6. 世界が米不足と価格高騰に悩む中、日本は生産を無理やり減らし余る輸入米の取り扱いに四苦八苦。FTAでは「国内農業保護」がいつも足枷になる。不思議だらけの「コメ大国」。
  7. 乳製品についても同じ。バターの品切れが続くがチーズはスーパーで売っている。バターを輸入すると1キロの600円のバターが通関後は三倍の1764円になる。一方チーズの関税は29.8%。チーズは国内生産が少なく需要の9割を輸入しているから(国内農家保護のための)高関税が不要なのだ。食物の自給率を高めるため国内農家を高関税で保護するのがニッポンの農業政策の中核だが、今回は国の保護が手厚い品目ほど品薄感が強まるという皮肉な事態となっている。
  8. 小麦についてもそう。政府は輸入小麦の売り渡し価格を30%引き上げ、トンあたり53000円だった価格が69000円に跳ね上がった。しかし値上げ分を上回るトンあたり1万7000円の国内農家への補助金相当額が政府売り渡し価格の中に含まれている。その他に税金で負担する年間900億円の農家への補助金もある。国民が払っている「見えないコスト」は膨大な金額に上る。

農業関係者は家族や関連団体を含めると1900万票を握る一大政治勢力だ。NHKなどのマスコミ、さらに自民党なんかを操るのは朝飯前。民主党や共産党も彼らの集票力の前にはひれ伏すばかり。しわ寄せは全部政治力を持たない都市弱者層(パートタイマーやワーキングプア、高齢者・年金生活者など)に転嫁される。現在ニッポンに蔓延している「攘夷思想」は農村ウヨがばらまいているものであるが、それはそうした方が彼らが儲かるという純粋に経済的な理由によるのだ。ナイーブな食育おばさん達は、このことに気がついているのであろうか。

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